M2・ポスター発表「捕食者除去実験における被食者への未知種の影響」
生物種間の相互作用を評価・測定する方法として、ある生物種を除去または減少させて、その人為的干渉がほかの生物種の個体数に与える影響を調べる方法がある。そしてこれを用いて、その生物種を保全すべきかどうかの判断材料の1つにできるという議論がある。一般に1つの生物種を除去すると、完全にその生物種がいなくなるのだから群集に与える影響は甚大だと考えられるが、実際に除去したときに劇的な作用を群集に及ぼすのは、群集の中でもわずかな生物種に限られている。保全に関して言えば、こうした強い影響を与える少数の生物種だけを特に重点的にモニタリングすればよい、という主張がある。
ところが最近、こうした除去実験のデータの見方に関して強い疑念を投げかける考えが現れた。今まで弱い影響しかないと見なされていた実験データの中には、影響力の分散が大きいものがあるという指摘である。確かに平均をとれば弱い影響しかないように見える生物種についても、個々のデータでは、すなわち実験場所や実験開始時間等が異なれば、かなり強い影響があるという指摘である。こうした大きな分散は、制御していない生物種(第三の生物種あるいは未知種)からの影響を除去実験が受けているからだとしている。このように除去実験のような実験で得られるのは、調査している2生物種の直接作用の大きさではなく、注目していない生物種からの影響も含めた間接作用の大きさであるという指摘である。さらに2生物種の直接作用が小さいときには、注目していない生物種からの影響が大きくなり、それが除去実験の結果に現れてくることが実験データの解析と野外での実験によって主張されている。
本研究では、数理的側面から上記の主張の真偽を確かめるためにモデルを用いて解析を行った。そこでは捕食被食関係にある2種の生物と、注目していない未知種1種だけを考えた。注目している捕食者と被食者に、さらに未知種を加えた3種系において捕食被食関係を考え、そうして得られる8種類のネットワークについて、モデルの上で捕食者除去実験を行い、それぞれについて未知種の影響を考えた。その結果、未知種との捕食被食関係の違い(ネットワークの違い)によって捕食者除去実験の結果が異なること、そしてInflow Sensitivityで評価した間接作用と除去実験の結果との関連が得られた。
見てみて真似る やってみて真似る
あさのおかぎり 真似る良い子は すくすく育つ
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